西遊記に登場する三蔵法師のお供といえば、猿をモチーフとした孫悟空、豚をモチーフとした猪八戒、そして河童をモチーフとした沙悟浄です。ここでふと疑問になるのが、なぜ沙悟浄だけ妖怪という架空の生き物なのかということ。そのルーツを探ってみました。

沙悟浄は河童ではない

そもそも河童とは日本の妖怪であり、西遊記の発祥である中国には存在しない妖怪です。この一点から考えても、沙悟浄のモチーフが日本の妖怪である河童であるということは考えづらいです。

沙悟浄のモデルとなったのは、「捲簾大将(けんれんたいしょう)」という天界の役人なのです。神である天帝を守護する役目を担っていましたが、ある日天帝の宝物である水晶を落として割ってしまったことから、天界を追放されてしまいます。

下界に落とされた捲簾大将は、人々を襲うようになってしまいました。そしてある日、天竺に経典を取りに行く取経者を探していた観音菩薩(かんのんぼさつ)と出会って突然襲いかかりますが、観音菩薩のお供に阻止されてしまいます。捲簾大将は今までの罪を告白すると、観音菩薩は次に来る取経者の弟子となるように諭し、沙悟浄という法名を与えたのです。次にきた取経者こそが、三蔵法師だったというわけです。

日本では河童という架空の生き物がモチーフになっていますが、本場中国でも天界の人物という、いわば架空の人物がモチーフとなっていたのでした。