居酒屋や蕎麦屋など、主に和食を提供する店の軒先には、大きなタヌキの置き物が置いてある事があります。笠を被り、徳利を片手に持ったこのタヌキには、どういった意味があるのでしょうか。

タヌキに込められた想い

このタヌキは1950年代に全国的に広がったとみられますが、特に名前はありません。滋賀県で有名な信楽焼(しがらきやき)という焼き物で出来ており、現在では信楽焼といえばタヌキという構図が出来上がってしまいました。

最初にこのタヌキを製作したのは、京都出身の陶芸家である藤原 鋳造です。彼が作るタヌキは笠を被り、手には徳利と通帳を持ち、ギョロっとした目に、ぷっくりお腹のふくよかな体型をしています。これら全てに、縁起担ぎの意味が込められているのです。

被っている笠は「難を笠で避ける」ため、手に持った徳利は「徳がつく」ように、通帳は「商売繁盛」の意味、大きな目は「遠くまで見通す」力を与え、ぷっくりお腹は「太っ腹」という意味があります。そして「タヌキ」という存在そのものも「他抜き=他の店を抜く」という意味がかかっているのです。