「はっけよい、のこった」の掛け声とともにスタートする相撲の取り組み。互いの力士の両方の拳が地面についた瞬間に取り組みが開始されますが、その立ち会いは力士同士の意気が合わないと取り直しとなるほど、拳を地面につけるという行為は気合が必要なものです。しかし中には気合が入りきっていない力士もいるようで……。

相撲界の珍事

その事件は1964年の5月場所4日目、高見山と吉瀬川の一戦にて起こりました。高見山はハワイ出身の力士であり、その体はまさに巨体で、本名であるジェシーをニックネームにしたわれていました。対する吉瀬川もかなりの巨体でしたが、非常に気が弱かったのです。取り組みが開始された瞬間、あろうことか対戦相手に背中を見せて逃げ、自ら土俵を降りてしまったのです。

しかし「逃げ出し」という決まり手は存在しないため、物言いが付き仕切り直しとなりました。再度取り組みが成立すると、高見山は吉瀬川を優しく押し出し、決着がついたのです。