小学2年生になると、算数で最初に掛け算を習います。最初は何のことだか分からないけど「九九」を一生懸命に繰り返し声に出して覚えたものです。九九は大人になってからもほぼ毎日のように使う実用性の高い計算式ですが、実は割り算にも「八算(はっさん)」という九九があるのです。

八算

掛け算の場合は「1 x 1 = 1(いんいちがいち)」と1の位も覚えましたが、1をかけること自体にはあまり意味がありません。割り算でも同じで、1で割っても意味がないので、2〜9までの8つの数字で割る計算ということから「八算」と名付けられました。

「3 x 4 = 12(さんしじゅうに)」「7 x 6 = 42(しちろくしじゅうに)」という風に覚えた掛け算ですが、これが八算では「10 ÷ 2 = 5(にいちてんさくのご)」と覚えます。八算はソロバンをもとに作られています。昔のソロバンは現在のものとは違い、5を表す上段の5玉が2つ、1を表す下段の1玉が5つありました。式にある「天作(てんさく)」とは、天は5玉を下げて「5になりました」、作は1玉をすべて下げて「なくなりました」という意味になり、頭が混乱してしまいそうな言葉になっています。

他にも「10 ÷ 3 = 3…余り1」と、余りが出るような式の場合は「三一三十一(さんいちさんじゅうのいち)」という風に、どんな式でも対応しています。

こんな複雑な割り算版の九九が、昭和初期までは一般的に普及していたのです。