世界一長いピアノ曲としてギネスブックに認定されている『ヴェクサシオン』は、フランスの作曲家であるエリック・アルフレッド・レスリ・サティによって作られました。彼は「音楽界の変わり者」と称されるほどの人物でもあります。

嫌がらせという名のピアノ曲

『ヴェクサシオン』は52拍からなる1分程度の曲を、ただひたすらになんと840回も繰り返し演奏する曲です。何をもって840回という数字なのかは分かりませんが、この楽譜の隅には「このモチーフを連続して840回繰り返し演奏するためには、予め心の準備が必要だろう。最も深い沈黙と真剣な不動性の姿勢によって」と書かれています。

メトロノーム記号による正確なテンポ指定がないものの、テンポは「非常に遅く」と指示が書かれているため、この曲を完璧に弾き終えるには18〜25時間もの時間がかかります。

この「ヴェクサシオン」という言葉は、日本語で「嫌がらせ」という意味があります。この意味のまま作られた曲であるのなら、まさにその意図の通りに完成された曲といえるでしょう。

ちなみにこの曲の演奏に挑戦したピアノ奏者は過去何人かいます。その内、ピアニストのピーター・エヴァンスは595回弾いたところで幻覚症状に陥って演奏を止めているという記録があります。