青酸カリでの殺人は思いのほか難しい
ミステリーで王道の殺人方法として、青酸カリによる毒殺が挙げられます。被害者の遺体からアーモンド臭がすることから、青酸カリによる殺害だと断定するシーンなどがよく見られますが、実際はそんなに簡単なものではありません。
青酸カリによる殺人
青酸カリを摂取した場合、嘔吐・めまい・動悸・頭痛などの急激な症状を引き起こした後、血液の濃度が急低下し、痙攣を起こして死に至ります。この中毒症状は皮膚から吸収することでも起こるので、注意が必要です。推理小説やマンガ、ドラマで定番といえる死亡原因の一つですが、青酸カリでの殺人はあまり現実的ではありません。
被害者の遺体から発せられるアーモンド臭というのは、青酸カリが胃酸と反応を起こして発せられる臭いです。この臭いはお菓子などに使われるアーモンドの香ばしい臭いではなく、収穫前の甘酸っぱい臭いがするのです。
青酸カリによる毒殺の一例として、飲み物に混入するという方法が多くとられますが、これを成功させるには超えなければならない壁がいくつか存在します。
まずは青酸カリの臭いです。甘酸っぱいアーモンド臭というのはあくまでも胃酸に反応してのこと。青酸カリは乾燥状態では無臭ですが、空気中の二酸化炭素に触れると、あっという間に炭酸カリウムに変化し、独特な臭いを発するようになります。この臭いを出さないためには、空気に触れず、日光に当たらないように保管する必要があります。
次の壁は味です。青酸カリは鉄のような強烈な味がするといいます。また、強アルカリ性の薬品なので、口にした瞬間から口内に激痛が走り、すぐに吐き出されてしまいます。吐き出した直後に口内を洗浄すれば毒が回ることはないとされます。
この事から、食べ物や飲み物に混入、または食器などに予め塗っておくなどの手法での殺人は、非常に困難であると言えるのです。