切腹」は1873年に正式に廃止されるまでは、処刑方法として採用されてきた自決(自殺)です。時代劇などでもよく見かけますが、自分の腹を切るということは、かなりの覚悟がないとできることではありません。しかしそんな切腹を、寝ぼけながら行ってしまった武士がいます。

無意識の切腹

江戸時代には起きた出来事がつづられている『世間噺風聞集(せけんばなしふうぶんしゅう)』によると、長島藩藩主の長男に生まれた松平 忠章が、その人物であると書かれています。

松平 忠章は非常に優秀な武士であり、次期藩主を担う人物として注目されていました。ある日、忠章は城内で居眠りをしてしまいました。そして目が覚めると、自分の腹に刀が刺さり、腹が切られている光景が目に飛び込んできたのです。

寝ぼけて切腹してしまったことに気づいた忠章は、周りには冷静を装い安心させ、無事に手当てを受けました。しかしこの出来事のせいで次期藩主の資格を失ってしまいました。

その後、妻の実家でゆっくりした暮らしをすると、当時では珍しく64歳まで生き、この世を去りました。