「役所でたらい回しにされた」「病院をたらい回しにされた」など、あちこちを振り回されることを「たらい回し」といいますが、なぜ「たらい」なのでしょうか。

たらい回しの語源

たらいとは、丸い形をした平たい桶で、洗面器の何倍も大きいものを想像すると分かりやすいです。洗濯機がなかった時代に洗濯板とセットでどの家庭にもあり、嫁入り道具のひとつとして数える地域もあったそうです。

江戸時代には、たらいを足で回す曲芸が流行しました。複数の曲芸師が並び、足で回したたらいを次の曲芸師に次々と渡していくというもので、このことから「たらい回し」という言葉が誕生しました。

本来の「たらい回し」は「次へ送る」という意味であるため、回す側の視点の言葉でした。しかし現在では、冒頭に書いた例文のように、回された側の視点の言葉となってしまっています。