アンコールワットには日本武士の落書きがある
いつの時代も大切な文化遺産に落書きをする不届き者がいるようで、現代でも時折ニュースでそのような事件が報道されます。そんな中、カンボジアにある世界遺産「アンコールワット」には、江戸時代の武士の落書きが残されているのです。
アンコールワットの落書き
アンコール・ワットは12世紀前半に建てられたヒンドゥー教の寺院で、東京ドーム約15個分の広さとされる広大な敷地面積を全て周ろうとすると、数日間を要するといわれます。この寺院の入り口近くにある十字回廊の右側の柱に、問題の落書きはあります。
寛永九年正月初めてここに来る
生国は日本
肥州の住人 藤原朝臣森本右近太夫一房
御堂を志し数千里の海上を渡り
一念を念じ世々娑婆浮世の思いを清めるために
ここに仏四体を奉るものなり
この落書きを残したのは江戸時代の武士である森本一房で、まだ鎖国は始まっていない頃でした。この当時のカンボジアは「南天竺」と呼ばれ、仏教の聖地「祇園精舎」があると信じられていました。念願だったアンコールワットに到達した森本一房は、亡き父を弔い、母の後生を祈念したのです。そして、あろうことかその想いを柱に書き残してしまったのです。
現在ではこの落書きの上から墨で塗り潰されていますが、なんとか文字を読むことはできるそうです。