ウォルター・ハントは19世紀を代表するアメリカの発明家の一人です。彼は安全ピンやミシンなど、数々の後世に残る発明をしてきました。しかしそのヒラメキの鋭さとは相反し、発明後の商品を活かす手法は全くもって鋭いとは言い難いものでした。

安全ピンの開発秘話

現代では当たり前のように使われている「安全ピン」ですが、その起源は古く、古代ローマ時代から「フィブラ」という名称で安全ピンの原点になるようなピンが発案されていました。

ウォルター・ハントの発明した安全ピンは、針金をループ状にして、しっかりと固定できるようにしたものでした。この発明をなんとものの3時間程で完成させたウォルターは、たった15ドルの借金を返済するためだけに、この特許権をW R Grace and Coという会社に400ドルで売却してしまったのです。

400ドルを現在の価値に変換すると、おおよそ1万ドル(約100万円)と言われていますので、15ドルの借金は現在の価値で375ドル(4万円弱)ということになります。たった4万円の借金を返したいがために、その後の安全ピンの使用料などの様々な収益は、1ドル足りともウォルターの懐に入ってくることはなかったのです。