それは静岡県浜松市天竜区と長野県飯田市の境である兵越峠でのこと。「峠の国盗り綱引き合戦」と呼ばれるその戦いは、1987年から毎年、10月の第4日曜日になると行われます。

毎年移動する県境

「遠州軍(浜松市天竜区)」と「信州軍(飯田市)」それぞれが10人1チームになり、綱引きで対決します。3本勝負の2本先取で勝敗が決され、1・2回目の勝負では制限時間は2分で、必ず女性選手を最低1人は入れなければなりません。3回目の勝負では制限時間は無制限かつ女性選手の出場は必須ではありません。

この勝負で勝った軍は、県境を1m相手側へ押し込むことができます。2019年現在では信州軍が勝ち越しているため、2メートル遠州側に県境が設置されています。

この戦いで決定された県境には「この標識は国盗り綱引合戦に於いて定めた国境である 行政の境に非ず」と書かれた立て札が立てられます。この戦いから1年間は県境の位置は動かされることはありませんが、この立て札に書かれた内容の通り、当然ながら行政で定められたものになるわけではありません。