入浴用のお湯を溜める容器を「湯船」と呼びます。お湯が溜まった様子が船の形に似ているからなのでしょうか。それとも水と船が関連しているからなのでしょうか。なぜ湯の船と書くのでしょうか。

湯船の語源

室町時代では風呂といえば蒸し風呂でした。江戸時代にまで時が進むと、上流階級の間で湯を溜めたお風呂が一般的になり、それが庶民に広まっていました。とはいえ、銭湯は水を大量に必要とすることから入浴料もそれなりで、銭湯自体の数もあまり多くなく、毎日気軽に銭湯に通うことはあまりできなかったと考えられます。

江戸の町は至る所に水路が設けられており、屋形船や行商の船などが行き来していました。そして移動式銭湯とも呼べる、浴槽を乗せた船も登場したのです。これが「湯船」の語源です。この湯船は銭湯の半額程度の値段で入浴することができ、江戸の人々に親しまれていました。

しかし江戸の町が整備され銭湯の数が増えると共に、この湯船は姿を消していきましたが、その言葉だけが残ったのです。