犯行現場で指紋を採取する。二つと同じ指紋は存在しないことから、犯人を断定するきっかけとなる指紋鑑定は、捜査では極々当たり前の手段として用いられています。しかし指紋鑑定という手法が確立されるには、日本の歴史が深く関わっているのです。

指紋鑑定が誕生したきっかけ

指紋の研究は古くから行われてきましたが、初めての研究は1684年にイギリスで発表された『指紋に関する研究報告』とされます。そして、指紋科学という分野が確立され、指紋を用いて個人識別ができないかという研究が始まります。そこで本格的な研究論文を世界に発信した人物が、ヘンリー・フォールズです。

フォールズはキリスト教の宣教師として1874年に日本に来日。現在の東京都中央区に「築地病院」を設立し、診療にあたるかたわらで科学の研究をする有名な科学者でもあります。

フォールズが着目したのは大森貝塚から出土された縄文土器でした。また、当時の明治時代には当たり前に行われていた、書面に拇印を押す習慣にも興味を示しており、指紋で個人識別ができるのでは?と考えていました。そして有名な科学雑誌『ネイチャー』に研究した論文を提出しました。その論文の内容は、指紋は唯一無二であるという結果でした。

この論文をきっかけとし、世界でいち早くイギリス警察が指紋鑑定の捜査を導入し、世界中へと広まっていったのです。