近年では電子ケトルが登場したことによって、隅に追いやられている印象を受けますが、ヤカンはお湯を沸かすだけでなく、その蒸気は加湿器の役割も果たすなど、根強い人気があります。そんなヤカンは、そもそもは単純にお湯を沸かすための道具ではありませんでした。

ヤカンの本来の使い方

1603年に発行された日本語をポルトガル語で解説した辞書である『日葡辞書』によると、「今では湯を沸かす、ある種の深鍋の意で用いられている」とあるように、この頃には既にお湯を沸かすための道具として用いられていました。

ヤカンは本来「薬鑵(やくくわん)」と呼ばれ、漢方薬を煮出すために使われていました。「鑵(くわん)」とは「水を汲む器」という意味で、「やくくわん」が転じて「ヤカン」と呼ばれるようになり、その後「薬缶」という漢字が当てられました。