シルエット」は、輪郭が描かれ、その内側は黒く塗りつぶされて表現される技法です。かつては影絵や切り絵と同義とされていました。このシルエットという技法は、ある男の節約によって誕生したのです。

シルエットの誕生

シルエットを生み出したのは、フランスの貴族であるエティエンヌ・ド・シルエットという人物です。この人物はルイ15世のもとで財政大臣を任されていました。

ルイ15世の先代であるルイ14世は、大変な浪費家であり、その後を継いだルイ15世のフランスは、財政難に陥っていました。しかし特別な政策を打ち出せずにいた財務大臣であるシルエットは、国民に節約を心がけるようにお願いするしかできなかったといいます。

写真のないこの時代において、人物を記録するために選ばれていた手段は肖像画を描くことでした。節約策は肖像画にまで及び、切り絵によって人物の特徴を描くようになり、次第に色を使わない影絵の技法が用いられるようになりました。

この最も安上がりの肖像画を、当時の財政大臣であるシルエットの皮肉の意味を込めて、シルエットと呼ばれるようになったのです。