1912年、ストックホルムで開催されたオリンピックのマラソン競技中、日本代表の選手が日射病により倒れてしまい、近くの農家に助けられるという事態が発生しました。選手が目を覚ましたのは翌日になってからのことで、止むを得ずレースを諦めたのです。その日本代表選手とは、2019年の大河ドラマ『いだてん』の主人公であり、「日本マラソンの父」と称される伝説のランナー「金栗四三」その人です。

レース中止のその後

金栗四三は失格になったと思いレースを諦め、大会本部にも告げずにそのまま帰国してしまったのです。このことからオリンピック委員会では金栗選手は行方不明扱いになっており、棄権の意思が伝わってはいませんでした。

時は過ぎ1967年、ストックホルムオリンピック開催55周年を記念する式典を開く上で、当時の資料を調べていたオリンピック委員会がこの事実に気付き、金栗を記念式典でゴールさせるために彼を式典に招待しました。招待を受けた金栗は、競技場をゆっくりと歩きゴールテープを切ったのです。

「日本の金栗、ただいまゴールイン。タイム、54年と8ヶ月6日5時間32分20秒3、これをもって第5回ストックホルムオリンピック大会の全日程を終了します」というアナウンスが流れ、オリンピック史上最も遅いマラソン記録として、この珍事は今もなお語り草になっています。